ドバラダ飛空船〜ブルースからハワイまで〜

ギターをひいたり真空管アンプをつないだり

Get On Board

  前回のつづき。予約していたライ・クーダータジ・マハールの新作がとどいた。

 

krokovski1868.hateblo.jp

 

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『Get On Board』(ライ・クーダータジ・マハール、2022年)

 

 ザ・おっちゃん音楽。貨物列車でウキウキ。タイトルは「乗っていきな」というほどの意。

 

 ピート・シーガ―、レヴァランド・ゲイリー・デイヴィス、ドク・ワトソン、そしてサニー&ブラウニー。当時マッカーシズムのただなかにリリースされていた音楽を、ふたりとライの息子ホアキン・クーダーが再訪した作品。

 

 これもはずかしながら、タジ・マハールライ・クーダーのつながりをながいあいだ知らずにいた。ずっとべつべつに聞いていた。

 

 タジ・マハールは本作でケブ・モのスペシャルモデルをつかったそうだ。ケブ・モといえば、高校のころにモントルー・ジャズ・フェスティバルをTVで観たきり、ちゃんときいたことがない。ギブソンからシグネチャーモデルがでているくらいだから、きっと有名なのだろう。

 

 モントルー・ジャズといえば、キザイア・ジョーンズもすごかった記憶があるけれど、いまどうしているのか知らん。ちゃんと追いかけずに放置しているアーティストがおおすぎるのだ。

 

 例によって解説文を読んでみたところ、こういうスタイルはピードモント・ブルースというのだそうだ。私にとってこれはザ・バンドのビッグ・ピンク的スタイルだが、ブラインド・ボーイ・フラーからきているという。そうなの? 

 

 冒頭の「ミッドナイトスペシャル」は、ブラフォーの演奏で子どものころにきいていたが、サニー&マギーの曲だったようだ。ためしに家にあるブラフォーのベスト盤のライナーを読むと、

 

「フォーク・リヴァイヴァルでのポピュラーソングのひとつで、ブルースからブルーグラス・スタイル迄さまざまに歌われたことを思い出しますが、もっとも愛されたスタイルが、ここでのブラザーズ・フォアやキングストン・トリオに代表されたモダン・フォーク・コーラスでした。そして彼等フォーク・コーラスの多くはウィヴァーズをお手本にしたものでした。原曲は黒人の間で歌われていた囚人の唄。それを12弦ギターを弾いて歌い、流行させたのがレッドベリーことハディ・レッドベターでした。

 なお、この歌、ヒットとなったのはポップスのポール・エヴァンス(60年)とジョニー・リヴァーズ(65年)。60年代フォーク・ブームがいかにポップ・フィールドを巻き込んだ全米的な流行であったか、この曲のヒットは、そうした現象を如実に物語ってくれます。」

 

 とある。小学生のころからアメリカン・ルーツ・ミュージックが耳にはいっていたわけか。どうりでブルースにひかれたわけだ。

 

 ものすごく大雑把にいうと、大戦の反動で安定をもとめ保守的になったのがアメリカの50年代で、そのまたゆりもどしで戦後生まれが壮大な反抗をくりひろげたのが60年代である。フリークライミングなどはもろにそうで、中流の若者たちが中心となって、当時の保守的な傾向に反抗して冒険的な営みとして発展させてきた側面がある。それでフリークライミングにはいまでも60年代カルチャーの尾がくっついている。

 

 すくなくとも、60年代にフォークリバイバルが全米的なムーブメントとなり、その前段階に赤狩りがあったということは、認識しておいてよいかとおもう。ピート・シーガーの率いたウィーバーズやイージーライダーズのあとの世代がキングストン・トリオやブラザーズ・フォーであり、彼らがレパートリーとしてとりあげたことで、レッドベリーをはじめとする戦前のブルースマンたちが再び脚光を浴びることとなる。ここにアラン・ロマックスのフィールドワークもかかわってくるし、以前とりあげたサン・ハウスも60年代に再発見されたクチである。

 

krokovski1868.hateblo.jp

 

 なんせ、アメリカのむかしの音源をきいていると、だれの曲なのかわからなくなることはよくある。そして、だれが書いたかわからないルーツミュージックをきいているうちに、なぜだか自分のルーツも再確認されていくようである。おっちゃん音楽は棚卸し音楽でもあるのかもわからない。

 

 以上、報告おわり。

 

 

GET ON BOARD

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