Rico「Man From Wareika+9」(1977年発表、2004年マスタリング)
今夏はハワイつながりでジャック・ジョンソンを再訪していたので、夏といえばレゲエであるということを、ほとんど忘れさっていた。
レゲエといえばボブ・マーリー、という認識にまちがいはないものの、ほかにも大勢の才能がひしめいているわけで。20年ちかくまえ、レゲエ関連の映画公開とセットで往年の名盤が再発されたタイミングがあり、いろいろきき回したおぼえがある。
そのなかではリー・ペリーの『Super Ape』がなんだかんだ出色だったようにおもっている。当時なん本か映画を観たかぎりでは、リー・ペリーというひとは奇人変人のたぐいのようで、なん枚か作品をチェックはしたものの、ついていけなかった印象である。
映画では『The Harder They Come』が記憶にのこっている。『Superfly』のジャマイカ版といってしまえばそれまでではあるのだが、ジミー・クリフといえばやはりこの表題曲がおもいうかんでしまう。
さておき、手もとにあるのはリー・ペリーでもジミー・クリフでもなく、リコの『Man From Wareika』である。サードワールドとかスカタライツとかトゥーツ・アンド・ザ・メイタルズとか、ほかにいくらでもあったはずなのに、どうしてこれがのこっているかというと、コミカルなミュシャのようなタッチのジャケットが気に入って、手もとにおいていたのである。描かれた床のタイルや洋服の模様がいい感じであったがために、売られることなく20年ちかく棚にはいっていた。そういうことってある。
もっとも、盤面がよごれていて、ときどき音が飛んでしまうので、売ろうにも売れなかったというのもある。これもDIY案件かとおもい、グーグル先生に訊ねたところ、アルコールとメガネ拭きでクリーニングする方法をおしえてくれた。このご時世、エタノールにはこと欠かないので、ためしてみたらそれとわかるくらい改善した。Awesome!
レコードの溝に沿うイメージでまわしながら拭くのではなく、CDの中心から端にむかって放射状に拭くのがいいそうだ。はずかしながらずっと知らなかった。
ともあれ、肝心のサウンドであるが、このまえのPazy & the Black Hippiesのようなユルさはない。かなりかっちりした、端正なグルーヴである。
レゲエにしては訛りもよわく、インストなのでよけいにキリっとした仕上がりがめだっている。熱気というか猥雑さというか、そういうものはすくない。なんならクールですらある。
真面目なはなし、自分にとってのレゲエのサンプルのような位置づけでとっておいた面もある。したがって、これがとくに秀逸だとか白眉だとかいう盤ではない。頭からシッポまで、レゲエのgood vibesがきっちりパッケージされている。
しいていうなら、めだつのはやはり「You Really Got Me」と「Ska Wars」だろうか。どちらも見事に消化し昇華されていて、とくに後者をきけば、真面目なだけでなくユーモアもあることが知らされる。
なお、+9は別テイクではなく、ボーナストラック追加というていのコンピレーションだった。それもどうやら一巻全集を目ざした盤らしい。
作品主義というか、30年ちかく作家のことをあまりしらべないで生きてきているので、とにかく音の背景がわかっていない。オビを確認すると「スペシャルズへの参加で知られるトロンボーン奏者の2作目」となっている。
スペシャルズといえば、私はルーディーということばを「A Message to You, Rudy 」でおぼえた。ついでにいうと、日本はアルフィーの歌詞のなかにも「孤独なルーディー・ボーイ」というのがでてくるが、曲名をちょっとおもいだせない。
ライナーノーツによると、ラスタファリズムを一大ムーブメントとして結実させたのはボブ・マーリーといってよいが、いっぽうでこの一種のアフリカン・ルーツ信仰は、スカがうまれるまえ、1950年代から徐々に形成されていったという。タイトルのワレイカは「ワレイカ・ヒル」というラスタのコミューンを指すのだそうだ。
このひとはスカタライツのドン・ドラモンドと双璧をなす存在だったようで、はやい時期に渡英していくつか録音をのこしたもののヒットにはめぐまれず、76年のアイランドと契約した本作で花開いた、とのことである。
ジャマイカもいちどくらい行ってみたいが、これもいつになるやら。ひとまず報告おわり。