なぜか急にジェフ・ベックのことが浮かんできたので書く。
ジェフ・ベックは、トリッキーで自由奔放なプレイをするというだけではない。ギターを弾かないひとが聞いてもオッとおもうし、見るとオワッとのけぞるが、それよりもギター弾きにある種の感興をおこさせるような弾き手である。
ミュージシャンズミュージシャンというのでもなくー独創的な演奏をするのでそういう側面もあるもののー、エレキギターを弾く人間が、はじめてギターをもったときに抱く衝動に訴えかけるようなプレイをする。書くといっておいてうまく言語化できないのだが、ひとことでいえば、ロックギターのカッコよさを体現しているということになるかとおもう。死ぬまでロックしていたという点では、ある意味、鮎川誠と似ているといっていいかもわからない。
鮎川誠といえば、晩年の配信された音源を聞いてぶっとんだおぼえがある。テクニックなど通り越して、奇妙ないいかたになるが、円熟したパンクのように聞こえた。
ベックは、円熟といってもまちがいではないだろうが、すくなくとも枯れるという表現が似合わないギタリストだったとはいえるとおもう。本人はベジタリアンだったのに、植物のたとえがまったく似合わないところもロックしている。
ほかにわたしがジェフ・ベックについて知っているのは、車いじりが好きだったらしいということくらい。これもロックギター弾きの趣味としては最高の部類にはいるだろう。ピアニストがサンドバッグを叩くようなものである。反田恭平氏がそうだったとおもうが、いまはどうか知らない。
そういう点では、岩登りをしながらギターを弾くというのも、ロックという意味では案外いい線いっているかもわからない。せいぜいパキらないよう気をつけたい。以上、報告おわり。