ドバラダ飛空船〜ブルースからハワイまで〜

ギターをひいたり真空管アンプをつないだり

音楽を聴こう45 ~Hot Tuna~

 『ニューオリンズハウスのホットツナ』(ホットツナ、1969年)

 

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 ホットツナ、ときいてグループ名をおもいうかべるひとは、どれくらいいるものなのだろう。そこまでメジャーでないのはたしかで、メンバーがメジャーなのもたしかで、グループ名に似つかわしくないグループ名なのもたしか。「突然段ボール」や「ヤバイTシャツ屋さん」など、日常語でもシュールな組み合わせにすれば耳にのこりやすいのに、ホットツナではまあまあおぼえにくい。

 

 ジェファソン・エアプレインのひとたちがつくったアコースティック基調のブルースバンドで、本作はさながら早すぎた『アンプラグド』のような趣になっている。カリフォルニアはバークレーで1969年にこのような盤がでていることにおどろかされる。

 

 レパートリーはトラディショナル、リロイ・カー、ジェリー・ロール・モートン、レヴァランド・ゲイリー・デイヴィスにオリジナル曲をいくつか。ジェリー・ロール・モートンといえば、まえに書いたアラン・ロマックスに再発見されたひとである。

 

krokovski1868.hateblo.jp

 

 私はこのひとをいつもジェリー・リー・ルイスとごっちゃにしてしまう。気をつけようとするほどまちがえるので、どちらもあまり口にしないようになってしまった。

 

 さておき、本作のサウンドである。ムチャクチャないいかたをすると、黒っぽさはあまりない。フリードリヒ・グルダがジャズを演奏するのとはちがうが、毛色のちがうオリジナル曲がはいっていることもあって、どブルースという感じはうけない。

 

 とくにオリジナル曲に、ダイナミクスというか、切迫感からのカタルシスのようなものが感じられる。私にいわせれば、ブラックネスは緊張や不安といった抑圧からの解放ではなく、そのなかでからだをゆらしつづけることなので、おなじブルースをやっていても、かなりちがってきこえる。

 

 もっとも、コーコネンによるコーコネン流のブルースとおもえば、すこぶる真摯なパフォーマンスなのはたしか。すなわち、1969年のバークレーのステージ上で、コーコネンはだれかの真似をしようとはしていない。これもプロとアマのちがいのひとつといえるとおもう。

 

krokovski1868.hateblo.jp

 

 総じて、ダウンホームよりはアットホームなブルースで、これも無茶なことをいえば、後半はすこしガーデンパーティー風になる。オリジナル曲を複数もってきているあたりで、クラプトンの『アンプラグド』とはアティテュードがことなっている。ロコとビジターのちがいということかもわからない。

 

 なお、ギターサウンドはあきらかにギブソン。型番まではききとれず。以上、報告おわり。