いまはどうか知らないが、しばらくまえまでは、カール・パーキンスはビートルズをとおして聞いたひとが多かったのではなかろうか。『Blue Suede Shoes』、『Honey Don’t』、『Everybody’s Trying to Be My Baby』、『Matchbox』、『Roll Over Beethoven』などである。初期ビートルズのレパートリーではわりと重要なひとではないかとおもう。
図書館にボロボロのベスト盤がひっそりと置いてあり、本人の演奏をちゃんと聞いたことがなかったので借りてきた。なんというかジョニー・キャッシュとエルヴィス・プレスリーの中間のようにきこえる。
とくに『Movie Magg』、『Let The Jukebox Keep On Playing』といった初期の曲は、ハンク・ウィリアムズかジョニー・キャッシュかといった雰囲気である。前者は2ビートで、後者はスチールギターのスライドがはいっている。スチールギターはこの時点ですでにエレキ化されており、フレージングからして抱えるスタイルではないとおもわれる。
そういえば、近所のジャンク屋に50年代製のフェンダーのエレクトリック・ラップスティールが置かれているのだが、ひょっとしたらああいうものをつかっているのかもしれない。もう1年ちかく展示ケースにはいったままだが、さいきんは顔をだしていないので、そろそろ売れたかもわからない。
話をもどすと、借りてきたベスト盤の楽曲群は、おおむねロックンロール調とカントリー調の2系統にわけられる。前者のリズムにかんしては、『Tennessee』などはもろに2ビートだが、『Everybody~』などはほぼ8ビートにきこえる。
ロカビリーがロックンロールになっていくととらえると、跳ね気味の2ビートがだんだんに8ビートになっていくという理解でいいのだろうか。このベスト盤は年代順に並んでいるが、2ビートとシャッフルと8ビートがまじりあっているというか、いかにも形成期という感じがする。
サウンド面の特徴としては、このようなビートの混在のほかに、曲中にブレイクがはいること、何かしらフックというか、リフがあることが挙げられる。エンディングにもお決まりの作法がある。
ギターソロについては、異弦同フレットの複音と、同音へのベンドまたはスライドによるアプローチはお家芸といっていい。これらはチャック・ベリーのイメージだが、だれがはじめたのか知らない。
曲の構成はハッキリしていて、バンド編成もシンプル、ボーカルも癖がなく、アンサンブルもきっちりしていて聴きやすい。ボーカルやギターだけが目立つようなこともなく、一曲一曲がしっかりパッケージングされている。したがってコピーはしやすいとおもわれる。
要はスタイルがはっきりしていて、シンプルで、混沌としたところがない。正統派というか、ロックンロール・クラシックといいたくなる。
グッドミュージックなのにいままでちゃんと聞いていなくて申しわけない。そして知らぬ間にロカビリーつながりになっていた。
それにつけても、スチールギターのスライドサウンドは、よく聞くとほんとうにいろいろなところにでてくる。以上、報告おわり。