ドバラダ飛空船〜ブルースからハワイまで〜

ギターをひいたり真空管アンプをつないだり

音楽を聴こう49〜山下達郎〜

『SPACY』(山下達郎RCA、1977年)

 

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 職場のゆるブラック化にともない、令和の二本差しー万年筆とボールペンーを断念していたら、インクフローがわるくなった。というより、無意識に筆圧をつよくしている。不必要にはやく、粗雑になっている。

 

 ことほどさように、いい道具はもちぬしの状態をことごとく反映する。「マーティンはきれいなタッチもきたないタッチも目立たせてしまう」と山下達郎氏がむかしのギターマガジンのインタビューで語っていたおぼえがある。記憶ちがいかもしれないが、いわんとしているところはわかる気はする。

 

 ちなみに達郎氏は自分のギターをヘタウマと謙遜している。松木恒秀などと比較したらそれはそうかもしれないが、満開に咲いている演奏に、テクニカルなチャチャはさしはさまれないことになっている。ボーカルギターに特有の、絶妙なグルーヴというものが、あるのである。

 

 達郎氏はかつて松木氏から「リズムは俺のほうがうまいが、ソロはおまえのほうがうまい」といわれて意味がわからなかったということを、これもおおむかしのサンデーソングブックで語っていた。これも記憶ちがいかもしれないし、僭越もいいところだけども、わかるような気はしないでもない。ボーカルと絶妙に絡む微妙にルーズなリズムで奏でられるギター、ミスさえも味わいをふかめる世界がひろがっている。

 

 つまるところ、ボーカルのグルーヴが曲の世界観をかたちづくるので、その意味ではリズム隊よりはるかにエライといっていい。ギターボーカルは野球におけるピッチャーのようなものである。ほんとうかyo!

 

 と、いいながら、わたしは「Solid Slider」の大村憲司のギターソロが好きである。きいたところでは、氏はさーっと録音して「気持いい〜! これでおかねもらっちゃわるいな!」といってさーっと帰って行ったという。

 

 名手に改めて合掌。『外人天国』についてはまたこんど。以上、報告おわり。

 

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P.S. そのむかしCharさんが追悼ステージ上で拍手がちいさかったとき「憲司に聞こえねえよ」といっていた。たしかフジロックだったとおもうがさだかではない。Charさんについてもまたこんど。