ジャコ・パストリアス『モダン・エレクトリック・ベース』
ベース教則ビデオの名作。ジャコの音源は数多あれど、ひょっとすると適当にアルバムを聴くよりこれを観たほうがおもしろいかもわからない。
ジャコのオリジナル・アルバムは難解でイマイチのれないこともあるし、ファンキーでたのしい演奏も多い反面、作品単位でみると散漫になったりして、なかなか愛聴するところまで至らないのがもどかしい、そういうひとはわりといるんじゃないかと思う。
このビデオは彼の最晩年のもので、聞いたところでは、ヤクに溺れてにっちもさっちもいかなくなったジャコをなんとかしようとホテルに缶詰めにして撮影したものらしい。随所に挙動不審なところが見られるので「このヒト大丈夫かな」と一瞬心配になるが、ベースを手にとるやものすごい演奏で吹きとばしてくれる。
自身による演奏の解説も貴重で、ホスト役のジェリー・ジェモットが巧みにコメントをひき出している。キング・カーティス等のバックでベースを弾いていたひとだが、このあたり完全に人選の妙といっていい。
ジャコの演奏スタイルは基本ファンクのりではあるものの、クラシカルな要素や、アフロキューバンの香りもあり、かと思うとジミヘンみたいにノイジーなこともするしで、ほんとうにジャコ・スタイルというほかないが、生まれ育ったフロリダの環境に負うところ大であったようだ。
ジョン・スコフィールドをまじえたセッションも収められ、さらにエンドロールではピアノを演奏するところまで見られる。買って損はないと思う。
ちなみに教則DVDなのでたいていはレコード屋ではなく楽器店にあります。以上、報告おわり。