ハワイ音楽さんぽのつづき。
図書館にコンテンポラリーなハワイ音源もあったのできいてみたところ、よくもわるくもふつうのグッド・ミュージックになっているという印象。借りてきたコンピレーションにジャック・ジョンソンが一曲はいっていた。ハワイのひと、だっけ?
***
ジャック・ジョンソンといえば、2000年代に颯爽とあらわれてスターダムにあがっていった印象があり、すくなくともワールドツアーでなんども来日するくらいには売れたはずである。私もそれなりにくらって、幕張メッセに観に行ったが、そのときジャックはしっかりイヤーモニターをつけていて、パフォーマンスはすでに大規模にパッケージングされたあとだった。
そのまえに国際フォーラムにきていていたのは知っていたのだが、いましらべると、もっとまえに来日していたらしい。そこで観ていたら、さらにくらっていたかもわからない。
デビュー当時にどういった音がはやっていたのか、さだかでないが、すくなくとも自分が観た2006年ごろは、フランツ・フェルディナンドがでてきたり、BECKが『グエロ』をだしたりしていたようなおぼえはある。
有機的であたたかく、シンプルかつアットホームなサウンドは、当時、おおくのリスナーがどこかで求めていたのだろう。閉塞感、というほどではないが、ばくぜんとしたよどみのようなものを感じていたところへ、一陣の風がさっとふきぬけたようだった。すくなくとも、シーンに風穴をあけたり、名をあげたり、なぐりこみをかけるようにきこえなかったのはまちがいない。
このなんともいえない押しつけがましさのなさというのは、ハワイのミュージシャンに兼業がおおいせいかとおもっていたが、ジャックもハワイ出身といわれると、南洋のひとの性格なのかなあという気もしてくる。
アコースティックもエレキもつかうがサウンドはいたってシンプル、それでいてファンキーさもあり、レゲエやラップの要素もはいっている。ミクスチャーだがロックナイズされず、はげしい曲があってもナチュラルさをうしなわず、緊張感や強度とはちがうところでグルーヴしているような音楽。そしてとにかくボーカルがすこぶる心地いい。
当時はこれがハワイの風とはわからなかったわけだが、『In between Dreams』をきいたとき、はじめから完成されている印象をうけたことはおぼえている。前二作をディグしながら「このひとはこのあとどうするんだろう」とかってに心配したおぼえがあるが、コンスタントにアルバムをずっとだしていて、なんなら去年の6月に新作がでていた。あらら。
『In between Dreams』がいちばん売れたはずで、作品としても完成度がたかく、まとまっているのはたしかだが、それ以前の作品もいい。アルバムとしてのまとまりと、サウンドがそこまでこなれていないというくらいで、むしろパッケージングされるまえの素の雰囲気がかんじられる『Brushfire Fairytales』や『On and On』を好むひともおおいのではなかろうか。私もそのクチで、この3枚から1枚えらべといわれたら、かなり迷うとおもう。
とはいえ、よくもわるくもはじめからスタイルが確立されているひとなので、核の部分はかわらず、したがってどこからきいてもハズレはない。逆にいうと、時期によって作風に劇的な変化があるようなひとではない。
彼が楽曲を提供している『A Brokedown Melody』というサーフムービーを手もとにおいているが、リラックスしたグルーヴが映像にしっくりとなじんでいる。本人がサーファーで映画制作をまなぶところからキャリアをスタートしているので、当然といえば当然なのかもしれない。
P.S. あとでWikipedia教授にきいたらオアフ島出身だった。たしか相撲の小錦もオアフ島だったし、私が気づいていないだけで、日本とハワイのかかわりは、むかしもいまも脈々とつづいているのかもわからない。
以上、報告おわり。