ドバラダ飛空船〜ブルースからハワイまで〜

ギターをひいたり真空管アンプをつないだり

音楽探偵、おもいだす

 『Hey, Hey』からはなしが転がって、あらぬ方向へうごきだしている。いつものように、このまま行けるところまで、飛んでいくことにしよう。

 

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 さいきん、ブラインド・ウィリー・ジョンソンをイメージして、6-4でベースをプンチャンしつつ、マイナーペンタトニックに2度のチョイ上げと4~5度のうごきを組み合わせようとしている。こういうのをチャーチ・フィールといっていいのかどうか、要継続確認。

 

 じっさい、プンチャンのリズムを固定して、上だけを自在にスライドでうごかすというのは、おもっているよりむつかしい。見方をかえると、決まったパターンをくりかえすのなら、なんとかなりそうでもある。

 

 つまるところ、プンチャンスタイルは弾き語りと相性がよく、その眼目は自動化できるところにあるんじゃないのとおもいはじめた。いったん自動化できればギターに神経をつかわなくてすむので、うたに集中しやすくなる。

 

 これに関連して、そのむかし何かの映画でボブ・ディランがスリーフィンガーの機械的なパターンわけについて語っていたことがあったが、ちょっと出典をおもいだせない。たしか2004年ころだったとおもうのだけど、あのころディランの映画がまとまって公開されていたので、ごっちゃになっているかもわからない。要継続確認。

 

 おぼろげな記憶にしたがうと、1-3-5-7とか1-7-3-5とか、そういうアルペジオのはなしで、それの組み合わせで伴奏のパターンがオートで生成されるから、いくらでも曲ができてしまう、というようなニュアンスだったと記憶している。映画の趣旨としては、当時のディランにとって詞は奔流のように湧いていた、ということだったとおもう。

 

 くりかえしになるが、こういうスタイルは、うたに集中するために伴奏を自動化しているわけで、それはブルースマンでも事情はおなじである。ブラインド・ウィリー・ジョンソンしかり、伝道師たちにとって、メッセージを伝えることが最重要だったのはいうまでもない。

 

 どちらが先かわからないが、モノトニックベースのプンチャンのくりかえし、うたのフレーズをスライドでなぞるうごき、そういったくりかえしによるヒプノティックな効果というのは、ある種の宗教的な内容のブルースの、核心のひとつといえるとおもう。

 

 ワンコードくりかえし系のひとというと、ジョン・リー・フッカーがすぐにおもいうかぶ。モノトニックというか、モーダルというか、適切な表現をおもいつかないが、おなじくりかえしでも、呪術的になるよりはドライブしていくもの―トレインソングのイメージである―と、くりかえしそのものにフォーカスしているものとに、わかれてくるのではないかとおもう。

 

 くりかえしがヒプノティックな効果を生むのは、電車のガタンゴトンでねむってしまうのとかわらない。だからグルーヴじたいはおなじ性質で、目的がちがうだけかもわからない。

 

 ・・・いや、どうだろうな。たとえばファンクはその場にとどまってゆらぎつづけるようなイメージで、ズレながらのくりかえしではあるものの、グルーヴはあきらかにちがう。JBを聞いて行進することもできようが、あれはどちらかというとその場で沸きたつように踊るための音楽である気がする。

 

 行進といってマリアッチやマーチングやニューオーリンズの音楽葬のようなものをイメージするとしたら、ドライブするのがトレインソング―このまえの『Hey, Hey』もそうだし、デレク・アンド・ザ・ドミノスの『Tell the Truth』などもそうだとおもう―で、その場でえんえん踊りつづけるのがファンクで、スピリチュアルになっていくもののなかにチャーチ系とヴードゥー系があると、そういう棲みわけもできなくはなさそうである。ラフすぎてそのままではつかえないだろうだが、そんな風におもいはじめている。

 

 すくなくとも、伝道師たちのブルースは、メッセージをよく伝えるためにああいうスタイルがえらばれているというか、生成されているのではないかという気がする。これがファンクだと、メッセージ性は希薄ということはないし、ブラックネスの称揚もあるとおもうが、往々にして自目的的である。すなわち行進するためでも祈るためでもなく、その場で踊るための音楽。

 

 ・・・いや、要はどのような音楽でも、メッセージとサウンドは切り離せないというだけのことか。あたりまえだyo!

 

 はなしをもどすと、ラグタイムでもスラックキーでも、戦前スライドのある種のスタイルでも、プンチャン系―ベース音を親指でステディに鳴らしながらそのリズムのうえにほかの指でコードを積み上げたりメロディを紡いだりする―の核心はかわらなくて、練習すれば自動化できる性質のものなんじゃないの、ということを希望をこめていいたかった、というだけのはなし。

 

 じっさいにできるものかどうか、押弦ではなくスライドに限定して、もうすこしやってみよう。以上、報告おわり。

 

P.S.  技術はすぐにあがらないので、セッティングも含めて工夫するしかない。ダウンチューニングでスライドをするとき、太い弦を張ったほうがいいというはなしをちょこちょこ聞くが、実際どうか知らない。コーティングやフォスファーにしたときに感触がどうなるかについても、あわせて検証したい。

 

 以上、報告おわり。