ドバラダ飛空船〜ブルースからハワイまで〜

ギターをひいたり真空管アンプをつないだり

へーへー

 『Hey, Hey』ばなしのつづき。

 

krokovski1868.hateblo.jp

 

 むかしどこかで見たジャケット写真から、ずっとビッグ・ビルは左足にギターを乗せるスタイルかとおもっていたのだけれど、映像を見たらふつうに右足だった。写真用のポーズだったのだろうか。

 

 いくつかの音源で鳴っている高い打撃音は、タップシューズだとおもうが、ちょっとはっきりしない。タップシューズだとしたら、テンポがはやいので、つま先とかかとで交互に踏んでいるとおもう。

 

 ビッグ・ビルの親指は、複弦をひいているというだけでなく、スラップにもなっているようなかんじである。手の角度をかえたりしてみたものの、うまく再現できない。

 

 すくなくとも、ベースラインにかんして、テーマリフの4拍めに右手でチョップをいれているバージョンがある。サン・ハウスがたまにいれるような動きを、もっとさりげなくおこなっている。

 

 You Tubeで演奏解説をしていたひと―しゃべりかたからしてイギリス人とおもわれる―によると、ビッグビル曰く「音楽をするのは馬に乗るようなもので、ステディなリズムのうえで、まえのほうに乗るか、うしろのほうに乗るか」だそうである。すくなくとも、この曲のビッグ・ビルのボーカルは、ギターに対して後ノリになっている。

 

 だから、といっていいとおもうが、コピーするのはかなりむずかしい。ひとりでふたつのノリをだしているからである。

 


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 ギターはオンタイムで、トレインソングというか、すくなくともファンクのノリではない。2と4ののびちぢみよりは4-1のつながりを強調してドライブ感をだしている。チョップをアフタービートではなく4拍めだけにいれているのは、そういうことだとおもう。なんとなく馬に鞭をくれるようなイメージだが、合っているか知らない。なんせ、本人がわざわざ意識しているとはおもえないので、自然にそうなっているものとおもう。

 


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 これがギターのほうものびちぢみしてくれれば、ボーカルもそれに合わせやすいのだが、別々なんだよな。やはりひとのスタイルをトレースするのはむつかしい。

 

 総じて、2音同時のベースラインだけでなく、スラップ音をステディに鳴らすことと、2-4ではなく4-1のつながりを意識するというのが、この曲におけるビッグ・ビルの親指のキモではないかとおもう。もっといえば1は最初だけで、あとは5-6-7-8とつづいていく感覚である。

 

 あとは、モノトニックといいつつ、じつはちゃんと内声をうごかしている点も、注意が必要かとおもう。手におえないので翻案では省略した。むつかしすぎるyo!

 

 このまえ読んだ『カントリーブルース』によると、ギターをはじめたのはおそかったようだがーもともとはフィドルを弾いていたそうであるー、ときにはかなりテクニカルなこともしている。器用なひとなのはまちがいないとおもう。

 

 ウェス・モンゴメリーもそうだけれど、大人になってからギターをはじめても、うまいひとはうまい。年齢など関係ないのである。

 

 とくにブルースマンの場合、録音環境もよくないし、よくもわるくも兼業のことがおおいので、録音するときにベストな状態でないことのほうがはるかにおおい。したがって、数曲きいて技量を判断しようというのは早計だとおもう。

 

 ビッグ・ビルの場合、うえの動画ではふつうにミスタッチしているし、後半はスローダウンしている。録っているのもピート・シーガーのようで、レコーディングよりはプライベートな記録にちかい。レコードになっているものでも、フォークウェイズの版はラフで、キレキレの状態ではないとおもう。

 

 その点、ヨーロッパのライブは仕上げてきている。ほかの曲もきいてみたが、とくにボーカルのコントロールがナイス。速いとか流麗とか複雑とか、そういうことではない。もっと速いひともいるし、もっとなめらかなひともいるし、もっとテクニカルなひともいるとおもう。そういうことではないとおもう。

 


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 ともかく、この曲の親指にかんして、上述の3つをおさえれば、ワイルドにドライブしつつも洒脱なベースラインをつくれるのではないかとおもったので、ここにのこしておく。とはいえ「hey, hey」が「ヘえ、ヘえ」にしか聞こえない人間のいうことなので、あてにはならない。

 

 田舎のおづんつぁんの発音をイメージすれば、ひょっとしたらうたえるかもしれん。以上、報告おわり。