不世出のジャズ・ギターの名手、ジョー・パスはインタビューでこう語ったことがある。「まちがった音というものは存在しない。あるとすれば、まちがった場所にあるというだけだ。音楽にまちがった音はないんだ」と。
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才能の査定とは、一種の承認であり権威づけである。それはとりもなおさず価値の安定につながる。
芸術作品には観念的な資本価値があり、批評家や評論家がそれを精査し、評価し、位置づける。きわめて幸福な場合には。
役割が人間をつくるというが、批評家や評論家や芸術家もその伝にもれないのか、どうか。私はかんがえたが、ついに結論は得られずじまいだった。