耳にするだけでインスピレーションを与えられる演奏は間違いなく存在する。そのような音に出会えた者は幸いである。
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Junior Mance Trio “At The Village Vanguard”
第一印象は「集中力」。ズージャのひとが慣れたところでライブを演るとよくもわるくもクルージングしてしまうことがあるが、本作はそれとは無縁。限界付近までいけば技術の多寡にかかわらず極度の集中が要求されるという普遍的な原則を知らされる。技術が足りなければいつも必死、だけど持てる技術を余らせないためにも膨大な精神の力が要るという話。
しかし日常的にこのクオリティでライブが行われていた時代があったのだからすごいと思う。この手の録音を聴いていると曲間に客がぜんぜん別の話をしているのが入っていたりして「曲聴かんかい」とか思うことがあるのだけれど、本作も演奏の熱と拍手がまったく見合っていない。
「このくらいは当たり前」ということなのだとしたら、もはやなんといっていいかわからない。同時代でもダニー・ハサウェイなどは客がメチャクチャ盛りあがってるけど。ありゃ別枠か。
以上、報告おわり。