ドバラダ飛空船〜ブルースからハワイまで〜

ギターをひいたり真空管アンプをつないだり

申し訳ありやせん。こいつ、良いミュージシャンなんだが、頭がトロくて、何んもわからないんでさ。

 このあいだ図書館で借りてきた『偉大なるブルースの肖像』を読んでいる。いまのところ読んだ文献のなかでダントツ1位を進呈したい。とくにヒューバート・サムリンのエピソードにグッと来たので、以下にメモしておく。

 

「おう、にいさん。おれたちゃあんたが誰か知ってるんだぜ。あんたの金に用がある。まずは靴とズボン、それからぜんぶ脱いでもらおうか。早くしな」ショットガンを持ったガキがそういったんだ。他のやつらは、ただ突っ立ってるだけだった。おれはいわれる通りにした。人通りのあるとこでだ。周りのやつらはただ遠巻きにしてるだけだ。おれがスッポンポンにされたら、みんなどっかに行っちまった。そん時おれは14セントしか持ってなかった。14セントだ。「たったそれだけか?」あいつらはいった。「そうだ。それがおれの全財産だ。さあ、おれを好きにしな。殺せ」おれはマジに怖かった。その時だ、おめえら何やってんだって声が背後から聞こえた。あいつら、それにビビッておれを殺しゃしねえかとハラハラしたぜ。声の主はガキどもの父親だった。親は銃を取り上げて、ガキどもを壁に沿って並ばせた。「すいません、サムリンさん。ほんとに申しわけない」おれは服を着た。みんなが見てるからな。親がいった。「こいつら何をしたんで?」「おれの全財産の14セントを奪ったのよ」おれの14セントは戻った。「この人をよく見ろ。うちのすぐ近くに住んでるお人だ。もしまたこの人に危害を加えたり、帰宅を邪魔したらお前たちの命はないものと思えよ」「イエス・サー、イエス・サー」おれは二度とトラブルに巻きこまれなかった。おれが引きはらったとき、そこはシカゴでいちばんヤバい地区だった。

 

 翻訳は石井光彦氏、存じ上げないが、語調といい語彙の選択といい漢字のあてかたといい、素敵である。なんなら家の棚にいれておきたい。以上、報告おわり。

 

 

P.S. ロバート・ナイトホークにかんするメモ。同書によると、ロバート・Jr・ロックウッドがキング・ビスケット・タイムをやめたあと、ナイトホークとヒューストン・スタックハウスが、サニーボーイのバックを務めていたという。

 

 サニーボーイⅡ、つまりライス・ミラーの音源をさがせばいいわけか。要継続チェック。