『すとーりーず』(ZAZEN BOYS、2012年)
さて、ZAZENの魅力は何処にある? ソリッドなサウンド? エッジィなリズム? それともあの無二のリリック? それら全部あるいはそれ以上、なんて言わないでくれ。ちっとばかし考えてみよう。
ロックの要諦はパワー感にある。それは衝動だったり暴力性だったり過激なステージングだったりと様々だが、我々の心を時に不穏さをこめて―要はヤバみたっぷりに―勢いよくぶんぶん揺らしてくる音楽、それがロックだと、声高らかに宣言しよう。
それでそのパワーなのだけれど、出しているほうも聞いているほうも、だんだん慣れてしまうところがあるのだな。これでバンドのパワーの源が純粋に初期衝動だけだったりすると「結局ファーストがいちばん良い」現象が起こる。このあたり誰しも心当たりのあるバンドが浮かぶのではなかろうか。これはせつないといえば、かなりせつない。
なん度もこんな現象に出くわしてしまうと、パワーの源泉というものは、その核は保ちつつ少しずつアップデートされるべきものと考えたくなってくる。バート・ランカスターが『山猫』のなかで「We must change to remain the same」といっているが、そういうもののようである。
それでZAZENのパワーの源は、じつはそこはかとなく漂う中年の饐えた欲望にあって、それがどんな様相を呈し、どのように変わりつつあるかについて書いていこうと思ったところ、急にクラウディア・カルディナーレの美貌を再見したくなってしまったので、それについてはまた今度。中年だねえ。