ドバラダ飛空船〜ブルースからハワイまで〜

ギターをひいたり真空管アンプをつないだり

イースⅡ

 前回のつづき。

 

krokovski1868.hateblo.jp

 

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 ともかく、ブルースの誕生に奴隷制の廃止が大きく関わっているのはたしかである。黒人が奴隷ではなくアメリカ人という自由人になり、自由人であるのに抑圧を受ける。そこにブルースは生まれる。

 

 解放後の産物は、すくなくとも理屈の上では自由であった。奴隷ではなくアメリカ人として認められたということは、自由になったということである。しかしながら、それにともなって、必然的にその自由人は孤立する。奴隷というひとつの共同体の一員であったのが、解放によって崩れたためである。

 

 そして、こうした状態でさえも長くはつづかない。奴隷解放にともなうジム・クロウ法(アメリカ南部の黒人に対する差別的な法律)の制定や、KKK(ク・クルックス・クラン)のような人種差別団体の勃興、リンチそして社会に蔓延する偏見のせいで、黒人が自由と威厳を白人なみに享受するのは、ほとんど不可能だった。

 

 自由と独立を人種差別が圧迫し、そこで黒人は新たに自分たちの共同体をつくって引きこもる。奴隷制の状態が再び作り直され、黒人は新たな孤立、すなわちアメリカからの孤立に追いこまれることになる。

 

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 このように、自由の身でありながらその自由が抑圧されているという状況で、ブルースは萌芽する。こうして生まれた初期のブルースでは、どのような内容が歌われたのだろうか。奴隷解放後の新たな差別待遇の中での哀しみはそのひとつであるといえそうだが、それだけではないだろう。

 

 もともと、ブルースとは、恋愛など日々のできごとを扱った歌、ひいては日常的な音楽ぜんたいを指していた。アフリカン・アメリカンのコミュニティから生まれた暮らしのなかの音楽を、彼ら自身がブルースと呼んできたのである。

 

 件のサン・ハウスによれば、ブルースは一種類しかないという。それは男と女の関係にまつわるもので、片方がもう片方を裏切るか、すて去ろうとしている。それ以外のシチュエーションはみんな「金目当てのクズだ」と彼は切り捨てた。

 

 彼のことばがどこまで正しいのかはわからないが、すくなくとも初期のブルースにおいて、恋愛というテーマが重要だったのはたしかなようだ。

 

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 ・・・と、ここまで書いてはみたものの、学生のレポートでもあるまいし、何やってんだという感じになってきた。いったん報告おわり。

 

 

参考文献

飯野友幸編著『ブルースに囚われて アメリカのルーツ音楽を探る』(信山社、2002年)

ピーター・ギュラルニック編『ザ・ブルース』(白夜書房、2004年)

三井徹『黒人ブルースの現代』(音楽之友社、1977年)