「自分を虫だと思っている人間は、踏みつけられる」。フランス人はいつでもうまいことをいう。
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ビルの地下2階にあるライブハウスの壁には無数のクラックがはしり、床には長年にわたって蓄積された宿命的な汚れが染みついている。
ライブハウスは現代の洞窟で、僕らはPETZLの助けを借りずともいつでも冒険にでることができる、そんな風に考えていた時期が僕にもあった。だいぶ昔の話だ。
ビートにあわせてたわむ床。ビールと汗と体臭の入り混じったほこりっぽい空気。
唸る轟音、揺れる体、差しあげられる手。熱狂と興奮、飽くことのない欲求。
もうなんの高揚も感じない。昂ぶりも、焦燥も、欲求もない。ここは過ぎ去った時間を思うだけの場所になってしまった。
以上、報告おわり。