有響室
マーヴィン・ゲイ『What's Going On』 *** 実家の荷物を整理しようとしたら、まあCDがでてくる。せっかくなので処分するまえに聴き直している。こういうことをするから片づけが一向にすすまないのだが、じっさい、片づけってそういうものだ。 あらためて…
音楽好きにフィジカル派とデジタル派といて、フィジカル派というのはもう、CDを買って帰ってきて机に置いて「やったよコレ」なんて聴くまえから悦に入っちゃう。私もそのクチである。 *** 金延 幸子『み空』 広めて良いものと良くないものとあるが、この…
アーマッド・ジャマル『The Awakening』 リリカルなまま疾走している。メロウなまま突き抜けている。硬質な叙情がある。相反する要素が両立する時、緊張感が生まれて、演者の精神力がそのテンションを見事に持続させている、そういう作品。 以上、報告おわり…
いいかげん、ではなく良い加減、と書くと急に見た目がよくなる。 *** Nujabesといったらドレ! なんだろう。曲名をそんなに把握していないのに、おそらく音だけはひと通り聞いている。どんな音かって? 説明はむずかしいよ。 季節でいえば晩秋、冬には哀…
『チャーリー・パーカー・ウィズ・ストリングス』を聴いた。オーケストラは少々騒がしかったが、バードは相変わらずスウィングしていた。 バードを崇拝した50年代の実存主義者たちのあるものは、バードのアルトを「黄金色のペニス」と呼んでいたという。確か…
「70年代には3つの偉大なビートがあった。フェラ・クティのアフロ・ビート、JBのファンク、そしてクラウス・ディンガーのノイ! ビートだ」 ―ブライアン・イーノ― *** ブライアン・イーノ『アポロ』 環境音楽やアンビエントという括りで語られることが多…
S・ワンダーはいい。ぞくぞくする。最高だ。・・・こんなざっくりした言葉はなんの説明にもならない。 しかしながら、世にはどこが、どうして、どれほどいいのかことばにするのをためらわせるものがたしかに存在する。 断言しよう。どのようなことばも、彼の…
ビリー・ジョエル『ピアノ・マン』 *** ―Sing us a song, you’re the piano man, sing us a song tonight.― バーには古いアップライトピアノが置かれている。それはいちおう掃除されてあるのでホコリはかぶっていない。調律も定期的にされているし、ハン…
ニック・デカロ『イタリアン・グラフィティ』 物語はときにニック・デカロの音楽のようにはじまる。気がついたらはじまっていて、そうして心地よくいつまでもつづく。 でもこれはこう書いてしまっても一向にさしつかえない。さりげなくエレガントにはじまり…
ジャコ・パストリアス『モダン・エレクトリック・ベース』 ベース教則ビデオの名作。ジャコの音源は数多あれど、ひょっとすると適当にアルバムを聴くよりこれを観たほうがおもしろいかもわからない。 ジャコのオリジナル・アルバムは難解でイマイチのれない…
じゃがたら『南蛮渡来』(1982) *** やあやあ、待ちわびた反乱の季節がやってまいりました。みんな己の皮膚を裏がえしにして、ついでにたましいもひっくりかえして、新鮮な血の匂いのする空気にさらしてあげましょう。 そうして怒りパワーが全身をかけめ…
南佳孝『Last Picture Show』 南佳孝といえば『South of the Border』が定番、なので未聴の方はまずそちらから。かの名盤は全篇にうすく漂うリゾート感と大人びた雰囲気が素敵です。 リゾート感といってもいろいろありますね。大瀧詠一をハワイとしたらこれ…
サン・ハウス『The Father of the Delta Blues』 せめてCD、できれば紙ジャケのを試してください。ダウンロード音源はご容赦願います。 このサウンド、何がすごいか、すこしも説明できないのが、すごくいい。興味があるならトライしてみるのがいちばんよくて…
セルジュ・ゲンズブール『Du Jazz dans le Ravin』 カタログの多い作家というのはどこから聴いていいか迷う。 一作ごとに別の顔を見せる作家もどれをすすめていいか迷う。 代表曲があって代表作のない作家はすすめたものか迷う。 代表曲と代表作がかみ合わな…
ブランキー・ジェット・シティ「Punky Bad Hip」 *** 数年前のサマソニに出たイエモンについて書こうと思って、「パール」だか「So Young」だか―いま聞きかえしたら「ジャム」だった―の歌詞を脳内再生していたら、なぜか途中からブランキーのこの曲に切り…
仕事で高知市にでかけたら雨に降られて、あやうく立ち往生するところだった。やれやれ。 土讃線がとまってしまったので黒潮エクスプレスで帰ってきた。高速バスもわるくはないが、わたしは電車のほうがいい。 ひとまず映画の、いや音楽の話。 *** 先日、…
耳にするだけでインスピレーションを与えられる演奏は間違いなく存在する。そのような音に出会えた者は幸いである。 *** Junior Mance Trio “At The Village Vanguard” 第一印象は「集中力」。ズージャのひとが慣れたところでライブを演るとよくもわるく…
アメリカン・ルーツ・ミュージックの体現者のひとりであるとともに各地のルーツミュージックの発掘から仲介、紹介までしてしまう偉いひと。演出家みたいにならないところがいい。演奏者でありつづけているのが、とっても渋い。 いまや「ルーツ」といってもす…
ロックには衝動がつきものだ。叫びだすか、壊しだすか、踊りだすか、狂いだすか、暴れだすか、抜けだすか、弾け飛ぶか、それら全部か、いずれでもないか。 ムチャクチャやっちまえ、どっか飛んでっちまえ、わけのわからない暴力的なエナジーをこれでもかと放…
シガー・ロスをはじめて聴いたのはいつだったろう。たぶんもう20年ちかく前だ。 日常的に聴かなくなって久しいが―「手もとに音源は10枚まで」運動をつづけているのだ―、このあいだ『INNI』の映画をやっていたので観たのである。やはり衝撃なのである。 シガ…
クラプトンに関しては私は『Pilgrim』がもっとも好きだ。本人的には不本意なアルバムだと思うけど。『461 Ocean Boulevard』もいい。「I Can’t Hold Out」のダルな感じとかもう最高。いまの時期にピッタリかも。 映像では1997年頃のツアーがオススメ。レース…
B. B. King & Eric Clapton 『Riding with the King』 両者ともに「代表作は?」と問われて答えるのがむずかしいアーティスト、前者は『Live at the Regal』、後者は『Unplugged』といってみることはできるものの、それで話が済んだりはしない。ブルースミュ…
ひさぶりにダイナマイツのアルバムを聞いた。1枚しかアルバムをのこさなかったものの、日本が誇るスーパー・バンドのひとつだ。 アルバムの帯に「貨物列車のようなR&B」と書かれていて、はじめは「なんのこっちゃ」と思ったのだけれど、聴いてみると妙に…
・ファラオ・サンダース『Pharoah』 1976年作品。フリーソウルとフリージャズのあいだをたゆたう感じがとてもいい。こういうのを巷ではスピリチュアル・ジャズというらしい。CDは廃盤になっているもよう。困るんだよなそういうの。 ・D’Angelo『Voodoo』 た…
Tychoの新作はグッドだ。そしてJ.Dillaがいい。さいきん、登るときに適当にトラックをかけているが―ある種の人気のないジムではこれが可能である―、もはやいいビートとグルーヴがあればそれで十分ではないかと思いはじめている。 トレーニング中は歌詞の部分…
Tycho、Four Tet、Boards of Canada…この種の楽曲を聞いているとほんとうに静かな気持になる。チルアウトというよりはEscapismの発露。 思うに、耳の注意力を上げすぎているのだ。無音のイヤホンをしているだけでもおなじ効果が得られるから、中身は関係ない…
Escapism from Reality. *** ワルシャワ・ヴィレッジ・バンドがいい。『re:akcja mazowiecka』というアルバムを聴いたところ、かなりいい。 もうひとつ、Marcin Wasilewski Trio も、とてもいい。21世紀にアップデートされたアーマッド・ジャマル・トリオ…